AAV(Adeno-Associated Virus)のウイルス包装後の精製工程は、最終的なウイルス力価、純度、および in vivo における安全性を左右する極めて重要なプロセスである。以下では、主要な精製方法、その原理、利点・欠点、適用シーンについて、研究および受託製造の観点から体系的に解説する。
1. AAV 主な精製方法一覧
| 精製方法 | 使用頻度 | 純度 | 回収率 | 適用分野 |
| Iodixanol 密度勾配遠心 | ⭐⭐⭐⭐⭐ | 高 | 中 | 研究用途標準 |
| 塩化セシウム(CsCl) 密度勾配 | ⭐⭐ | 非常に高い | 低 | 機構解析 |
| カラムクロマトグラフィー | ⭐⭐⭐⭐ | 高 | 高 | GMP / 前臨床 |
| PEG 沈殿 + カラム精製 | ⭐⭐⭐ | 中〜高 | 高 | 中・大規模 |
| 超ろ過(UF/DF) | 補助 | — | 高 | 濃縮・緩衝液交換 |
2. 各精製方法の詳細
1️⃣ Iodixanol 密度勾配遠心 ⭐⭐⭐⭐⭐
原理
完全粒子(full capsid)と空粒子(empty capsid)の密度差を利用し、15%–25%–40%–60% の密度勾配中で分離する。
基本工程
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細胞破砕(凍結融解反復または Benzonase 処理)
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Iodixanol 密度勾配への試料添加
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超遠心分離(約 350,000 g、2–3 時間)
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40% 層からウイルス回収
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超ろ過による Iodixanol 除去およびバッファー交換
利点
✔ full / empty capsid の分離が可能
✔ コストが低く、確立された手法
✔ 研究室スケールに適している
欠点
✖ 操作熟練度に依存
✖ スケールアップが困難
✖ 宿主由来タンパク質・DNA 除去に限界あり
適用分野
👉 基礎研究、小規模 in vivo / in vitro 実験
2️⃣ 塩化セシウム(CsCl) 密度勾配 ⭐⭐
特徴
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full / empty capsid の分離能が非常に高い
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精製時間が長い(24–48 時間)
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CsCl によるウイルス活性低下のリスク
現状
⚠️ 現在はほとんど使用されておらず、特殊な機構解析研究に限定される
3️⃣ カラムクロマトグラフィー精製 ⭐⭐⭐⭐
主な種類
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AVB Sepharose(親和クロマトグラフィー)
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イオン交換クロマトグラフィー(IEX)
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ゲルろ過クロマトグラフィー(SEC、ポリッシング工程)
代表的な工程例
細胞破砕 → ろ過 → 親和カラム捕捉 → 溶出 → IEX 精製 → 超ろ過・緩衝液交換
利点
✔ 高純度かつ高いバッチ間再現性
✔ 大量生産および GMP 対応が可能
✔ 宿主タンパク質・DNA 除去効率が高い
欠点
✖ コストが高い
✖ 血清型により結合効率に差がある(例:AAV5)
適用分野
👉 前臨床研究、IND、GMP 製造
4️⃣ PEG 沈殿 + カラム精製 ⭐⭐⭐
原理
PEG を用いて大容量上清から AAV を濃縮し、その後カラムクロマトグラフィーで精製を行う。
利点
✔ 大容量処理に適している
✔ 回収率が高い
✔ コストパフォーマンスが良好
欠点
✖ 最終純度は後続工程に依存
✖ PEG 残留の管理が必要
5️⃣ 超ろ過(TFF / Amicon)— 補助工程
主な目的
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ウイルス濃縮
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バッファー交換(PBS、DPBS、Pluronic F68 など)
⚠️ 単独の精製手段としては使用しない
3. 用途別おすすめ精製戦略
| 用途 | 推奨精製方法 |
| in vitro 実験 | Iodixanol + 超ろ過 |
| マウス in vivo | Iodixanol / PEG + カラム |
| ラット・霊長類 | カラム精製 |
| 前臨床 / GMP | 多段階クロマトグラフィー(親和 + IEX + UF/DF) |
4. 精製後に必須の品質評価(QC)
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ウイルス力価(qPCR / ddPCR)
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Empty capsid 比率(AUC / TEM / ELISA)
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宿主由来 DNA 残留量
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宿主由来タンパク質(HCP)
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エンドトキシン(LAL)
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無菌試験 / マイコプラズマ試験
5. よくある問題点
⚠️ 精製後の力価低下
→ 回収層の選択ミス / 過度な超ろ過 / empty capsid 増加
⚠️ in vivo 毒性・炎症反応
→ 宿主タンパク質・DNA・エンドトキシン除去不足
⚠️ 血清型ごとの回収率差
→ 血清型特性に応じた精製条件の最適化が必要
PackGeneについて
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