AAV 空ベクター(Empty Vector)と空カプシドウイルス(Empty Capsid)

Dec 03 , 2025
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空ベクター = 骨格あり、遺伝子なし、包装可能、主に対照・ベクター評価用。

空カプシド = カプシドのみ、ゲノムなし、発現不可、主にカプシド研究・免疫寛容・非遺伝子送達用。

1. 定義と構造の違い

1.1 AAV 空ベクター(Empty Vector)

  • 本質:完全なAAVゲノム骨格(ITR + ベクタ骨格)を含むが、目的遺伝子(治療用遺伝子やレポーター遺伝子)が欠失した組換えAAVベクター。

  • 構造

    • カプシド:AAVカプシドタンパク質(Capタンパク質、例:AAV2、AAV9など)

    • 内部ゲノム:複製に必要な末端逆向反復配列(ITR)とベクタ骨格配列(プロモーターやターミネーター骨格)、機能遺伝子はなし

  • 特徴:完全なベクター構造を保持しており、カプシドで包装可能ですが、目的遺伝子がないためターゲットタンパク質は発現しません。

1.2 AAV 空カプシドウイルス(Empty Capsid)

  • 本質:AAVカプシドタンパク質のみで構成された「空洞粒子」で、DNAは一切含まれない(ITRも含まず)。

  • 構造:VP1、VP2、VP3が比率通りに組み合わさったカプシド、内部にゲノムはなし。

  • 特徴:外殻のみ保持し、複製や発現は不可。純粋なカプシド複合体。

2. 製造原理の違い

2.1 AAV 空ベクター

  • 標準的な組換えAAVベクター包装フローに基づき、目的遺伝子を除去しITRとベクタ骨格のみを残す。

  • 通常、以下の3種類のプラスミドを共導入:

    1. 空ベクタ骨格プラスミド:ITR + 遺伝子なし

    2. Rep/Capプラスミド:複製酵素とカプシドタンパク質を提供

    3. 補助プラスミド:アデノウイルス補助因子(例:E1A、E1B)を提供

  • カプシドに空ベクターゲノム(ITR + 骨格)が包装され、完全な空ベクター粒子が形成される。

2.2 AAV 空カプシドウイルス

  • 原則:ゲノムを提供せず、カプシドタンパク質のみを発現させる。

    • 方法1:Cap(またはRep/Cap)プラスミド+補助プラスミドを導入し、ITRを含むベクタ骨格なしで自発的にカプシドが組み立てられる。

    • 方法2:標準AAV包装で生じる空カプシドを分離・精製(密度勾配遠心やイオン交換クロマトグラフィー)。

3. 機能と用途

3.1 AAV 空ベクター

  • ネガティブコントロール(ベクタ骨格コントロール)
    ベクタ骨格(ITRやプロモーター)の影響を排除し、目的遺伝子の効果のみを評価。

  • ベクター最適化ツール
    カプシド血清型やプロモーター骨格の安全性や導入効率を評価する際に使用。

3.2 AAV 空カプシドウイルス

  • ネガティブコントロール(カプシドコントロール)
    カプシドタンパク質自体の影響(免疫原性や細胞毒性)を排除。

  • 免疫寛容誘導(研究段階)
    実験的に、空カプシドの事前投与でAAVカプシドに対する免疫反応を低減し、後続投与効率向上を観察。

  • カプシド機能研究
    細胞結合能力、内在化効率、組織特異性の解析。

  • 薬物送達キャリア(改造必要)
    化学的・生物学的改変により、小分子・タンパク質・siRNAなどを空カプシド内に搭載可能。遺伝子リスクなしでターゲット送達が可能。

PackGeneについて

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