AAVの力価（Titer）および主な測定方法

AAV（Adeno-Associated Virus）の力価は、測定方法によりさまざまな単位で表されます。以下では、最も一般的に使用される単位と測定手法をまとめています。

🔹 1）vg/mL（viral genomes per mL）— ゲノム力価

最も広く利用されている測定指標で、AAVゲノム数を定量します。

■ 測定方法

• qPCR（定量PCR）

• ddPCR（デジタルドロップレットPCR）

ITRや特定配列を標的としてウイルスゲノムを定量する手法。

■ 特徴

• 再現性が高く、標準化されている

• 最も一般的

• 空カプシド（Empty Capsid）も含むため、感染能の有無は判別できない

🔹 2）GC/mL（genome copies/mL）— vg/mLと同義

文献によっては GC/mL が使用されるが、vg/mL = GC/mL と完全に同じ意味。

🔹 3）VP/mL（viral particles/mL）— 粒子力価

AAVカプシド粒子数を測定します。
空カプシド + 完全粒子（Full Capsid） の総数を反映。

■ 主な測定方法

• AAV Capsid ELISA（抗カプシド抗体を用いるELISA）

• TEM（透過型電子顕微鏡）観察

■ 特徴

• 粒子総数を評価

• 感染活性を反映しない

• TEMではEmpty/Full比の評価も可能

🔹 4）TU/mL（transducing units/mL）— 転導力価

遺伝子導入後の実際の発現を基準とした機能的力価。

■ 測定方法

• GFP/mCherryなどの蛍光レポーター発現

• ルシフェラーゼ活性

• 解析には FACS / 蛍光顕微鏡 などを使用

■ 特徴

• 感染活性を最もよく反映する指標

• 細胞種やプロモーター依存性があるためばらつきが出ることも

🔹 5）IU/mL（infectious units/mL）— 感染力価

ウイルスが細胞へ感染し、内部で機能する能力を反映した指標。

■ 測定方法

• 感染後にPCRや免疫染色でウイルスの発現を評価

• Transduction Assay とほぼ同義で扱われる場合もある

🔹 6）Dot Blot / Southern Blot — 伝統的ゲノム力価測定

PCR技術普及前に用いられていた方法。

■ 特徴

• ゲノム力価（vg/mL）を算出

• 現在は qPCR/ddPCR に置き換えられている

■ まとめ（比較表）