1. 研究背景および設計理念
第三世代レンチウイルスパッケージングシステム（Third-generation lentiviral packaging system）は、第一世代および第二世代システムを基盤として、生物学的安全性を最大限に高めることを目的に開発された分離型ウイルスベクター産生システムである。
本システムの基本概念は、
レンチウイルスの複製に必要な主要遺伝子機能を複数の独立したプラスミドに分割し、パッケージング細胞内でのみ一過性に相補的発現させることで、複製能を有するウイルスの発生を回避する
という点にある。
2. システム構成（機能的観点）
第三世代レンチウイルスシステムは、一般に4 つの機能モジュール（4 プラスミドシステム）から構成される。
1.トランスファーベクター（Transfer vector）
- 目的遺伝子発現カセットを搭載
- パッケージングシグナル（Ψ）を含有
- 自己不活化型 LTR（SIN-LTR）を採用し、挿入後の転写活性化リスクを低減
- 各種プロモーター、レポーター遺伝子、選択マーカーなどの研究用エレメントを組み込み可能
2.gag/pol 発現モジュール
- ウイルス構造タンパク質および酵素タンパク質を供給
- パッケージングシグナルを含まず、ウイルス RNA として封入されない
3.rev 発現モジュール
- gag/pol とは独立したプラスミドとして分離
- 未スプライスおよび一部スプライス RNA の核外輸送に関与
4.エンベロープ（Envelope）モジュール
- 一般に VSV-G が用いられる
- ウイルス粒子の宿主域および安定性を規定
👉 研究上の重要な特徴
rev、gag/pol、env が物理的に分離されていることにより、複製能を有するレンチウイルス（RCL）の再構成リスクが大幅に低減されている。
3. 第二世代システムとの研究的比較
| 比較項目 | 第二世代 | 第三世代 |
| プラスミド数 | 3 | 4 |
| rev | gag/pol と同一 | 独立プラスミド |
| LTR | 一部非 SIN | 標準 SIN |
| 生物安全性 | 中程度 | 高い |
| 主な用途 | 一般的 in vitro 研究 | 基礎研究・トランスレーショナル研究 |
4. 主な研究応用分野
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安定過剰発現または遺伝子ノックダウン細胞モデルの構築
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初代培養細胞、幹細胞、難トランスフェクション細胞への遺伝子導入
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動物モデルにおける長期遺伝子発現解析
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CRISPR/Cas9、shRNA、sgRNA の送達
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遺伝子治療・細胞治療の前臨床研究
PackGeneについて
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