レンチウイルス4プラスミドシステムとは?各プラスミドの構成と機能を詳しく解説

Aug 25 , 2026
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レンチウイルスベクター(Lentiviral Vector:LV)は、分裂細胞だけでなく非分裂細胞にも遺伝子を導入でき、導入遺伝子の安定した発現が期待できるという特徴から、遺伝子過剰発現、RNA干渉、CRISPR遺伝子編集、細胞工学、細胞治療研究など、幅広い分野で利用されています。

レンチウイルスのパッケージングには、一般的に2プラスミドシステム、3プラスミドシステム、4プラスミドシステムなどがあります。

その中でも4プラスミドシステムでは、ウイルス粒子の産生に必要な機能を複数のプラスミドに分けて提供します。

では、レンチウイルス4プラスミドシステムは具体的にどのようなプラスミドで構成され、それぞれどのような役割を持つのでしょうか?

1.レンチウイルス4プラスミドシステムを構成するプラスミド

典型的な4プラスミドシステムは、以下の4種類のプラスミドから構成されます。

  1. Transfer plasmid(トランスファープラスミド)
  2. Gag/Pol plasmid(Gag/Polパッケージングプラスミド)
  3. Rev plasmid(Revプラスミド)
  4. Envelope plasmid(エンベローププラスミド)

つまり、

Transfer + Gag/Pol + Rev + Envelope

という構成になります。

それぞれのプラスミドは、目的配列の搭載、ウイルス構造タンパク質および関連酵素の供給、Rev機能の供給、エンベロープタンパク質の供給という異なる役割を担います。

なお、実際のプラスミド構成や名称は、使用するレンチウイルスパッケージングシステムによって異なる場合があります。具体的な構成については、使用するシステムの仕様やプラスミドマップを確認する必要があります。

2.Transfer plasmid:レンチウイルスベクターのトランスファープラスミド

Transfer plasmid は、4プラスミドシステムにおいて目的とする遺伝情報を搭載するプラスミドです。

実験目的に応じて、以下のような配列を搭載することができます。

  • 目的遺伝子(GOI)
  • shRNA
  • miRNA関連発現カセット
  • sgRNA
  • CRISPR関連因子
  • GFP、mCherryなどのレポーター遺伝子

典型的なレンチウイルストランスファーベクターには、ウイルスRNAの転写・パッケージングや目的遺伝子の発現に関係するさまざまな機能エレメントが含まれます。

代表的なものとして、以下が挙げられます。

  • 5′ LTR
  • Ψ(Psi:パッケージングシグナル)
  • 目的遺伝子発現カセット
  • 3′ LTR
  • その他、ベクター設計に応じた調節エレメント

特に、Ψ(パッケージングシグナル)は、ベクターRNAがウイルス粒子に認識・パッケージングされるために重要な配列です。

ただし、すべてのレンチウイルストランスファーベクターが同一の構成を持つわけではありません。プロモーター、レポーター遺伝子、WPREなどの調節エレメントについては、使用するベクターの設計によって異なります。

3.Gag/Pol plasmid:ウイルス構造タンパク質と関連酵素を供給

Gag/Pol plasmid は、レンチウイルス粒子の形成やウイルスの複製関連プロセスに必要なタンパク質を、産生細胞内で供給する役割を担います。

Gag

Gagは、ウイルス粒子の構造形成やアセンブリーに関与する主要なウイルス構造タンパク質をコードします。

Pol

Polは、複数のウイルス関連酵素をコードし、代表的なものとして以下が含まれます。

  • プロテアーゼ(Protease)
  • 逆転写酵素(Reverse Transcriptase)
  • インテグラーゼ(Integrase)

したがって、4プラスミドシステムでは、通常、GagとPolを同一のGag/Polパッケージングプラスミドから供給します。

簡単に言えば、

Gag/Polプラスミドは、レンチウイルス粒子の形成と関連する酵素機能に必要なウイルスタンパク質を供給するプラスミドです。

4.Rev plasmid:Revタンパク質を供給

Rev plasmid は、4プラスミドシステムにおいてRevタンパク質を供給する独立したプラスミドです。

Revはレンチウイルスの産生過程における重要な補助因子であり、ウイルスRNAの核外輸送などに関与します。

4プラスミドシステムでは、RevをGag/Polとは別のプラスミドから供給する構成が一般的です。

そのため、プラスミドマップ上では以下のように表記されることがあります。

Rev plasmid

または

Rev expression plasmid

5.Envelope plasmid:ウイルスのエンベロープタンパク質を供給

4つ目のプラスミドが**Envelope plasmid(エンベローププラスミド)**です。

このプラスミドは、レンチウイルス粒子に必要なエンベロープタンパク質を供給します。

研究用レンチウイルスのパッケージングでは、VSV-G が広く使用されているため、Envelope plasmidが以下のように呼ばれることもあります。

VSV-G plasmid

VSV-Gは比較的広い細胞指向性を持つことから、研究用レンチウイルスベクターの産生に広く利用されています。

ただし、Envelopeが必ずVSV-Gであるとは限りません。研究目的や標的細胞などに応じて、異なるエンベロープタンパク質が使用される場合があります。

そのため、一般的な名称としてはEnvelope plasmidと表現するのが適切です。

6.レンチウイルス4プラスミドシステムの役割

4種類のプラスミドの役割をまとめると、以下のようになります。

プラスミド 一般的な表記 主な役割
トランスファープラスミド Transfer GOI、shRNA、sgRNAなどの目的配列を搭載
パッケージングプラスミド Gag/Pol ウイルス構造タンパク質および関連酵素を供給
補助プラスミド Rev Revタンパク質を供給
エンベローププラスミド Envelope / VSV-G ウイルスのエンベロープタンパク質を供給

つまり、

Transferが「目的配列を搭載」→ Gag/Polが「ウイルス構造タンパク質と関連酵素を供給」→ Revが「Rev機能を供給」→ Envelopeが「エンベロープタンパク質を供給」

という役割分担になります。

7.4プラスミドシステムと3プラスミドシステムの違い

レンチウイルスのパッケージングでは、3プラスミドシステムと4プラスミドシステムがよく用いられます。

主な違いは、RevをGag/Polと同一のプラスミドから供給するか、別のプラスミドから供給するかという点です。

3プラスミドシステム

典型的には、

Transfer + Gag/Pol/Rev + Envelope

という構成です。

つまり、

  • Transfer plasmid
  • Gag/Pol/Rev packaging plasmid
  • Envelope plasmid

の3種類で構成されます。

4プラスミドシステム

一方、4プラスミドシステムでは、

Transfer + Gag/Pol + Rev + Envelope

となります。

つまり、

  • Transfer plasmid
  • Gag/Pol plasmid
  • Rev plasmid
  • Envelope plasmid

の4種類です。

したがって、4プラスミドシステムは、典型的な3プラスミドシステムにおけるGag/PolとRevの機能を別々のプラスミドに分けた構成と考えることができます。

ただし、プラスミド数が多いほど必ず優れているというわけではありません。各パッケージングシステムには、それぞれ異なる設計思想や特徴があります。

8.4プラスミドシステムで重要な構成要素

典型的な4プラスミドシステムでは、以下の4つの機能を提供することが重要です。

① Transfer

パッケージング対象となるベクターRNAを提供します。

② Gag/Pol

ウイルス粒子の構造形成および関連する酵素機能に必要なタンパク質を提供します。

③ Rev

Revタンパク質を提供します。

④ Envelope

ウイルス粒子のエンベロープタンパク質を提供します。

したがって、4プラスミドシステムを説明する際には、この4つを主要な構成要素として扱うのが適切です。

なお、Transfer plasmidに含まれるプロモーター、レポーター遺伝子、WPREなどは、使用するベクターの設計によって異なるため、4プラスミドシステム全体に共通する必須構成要素として一律に扱うべきではありません。

10.まとめ

レンチウイルス4プラスミドシステムは、一般的に以下の4種類のプラスミドで構成されます。

Transfer + Gag/Pol + Rev + Envelope

それぞれの主な役割は以下のとおりです。

  • Transfer plasmid:GOI、shRNA、sgRNAなどの目的配列を搭載
  • Gag/Pol plasmid:ウイルス構造タンパク質および関連酵素を供給
  • Rev plasmid:Revタンパク質を供給
  • Envelope plasmid:ウイルスのエンベロープタンパク質を供給

3プラスミドシステムとの大きな違いは、典型的にはRevをGag/Polと分離して独立したプラスミドから供給する点です。

ただし、レンチウイルスのパッケージングシステムは、メーカーやベクター設計によって構成が異なる場合があります。そのため、実際の実験や受託製造では、プラスミドの名称だけで判断せず、具体的なプラスミドマップ、機能エレメントおよび使用するパッケージングシステムの仕様を確認することが重要です。

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