AAV(アデノ随伴ウイルス)の製造では、精製前のサンプルでは高い力価が確認できていたにもかかわらず、精製後に vg/mLが低下することがあります。AAV精製後の力価低下は珍しい現象ではなく、必ずしも精製工程そのものに問題があるとは限りません。
実際には、精製工程中にAAV粒子がどの程度失われたのか、どの工程で回収率が低下したのか、また最終製品の品質にどのような変化が生じたのかを分けて確認する必要があります。
AAV精製後に力価が低下する主な原因
AAV精製後の力価低下には、複数の要因が関係しています。特に重要なのが、精製工程におけるAAV粒子の損失、血清型による精製特性の違い、クロマトグラフィー条件、UF/DF工程での回収ロス、容器やフィルターへの吸着、そしてAAV粒子の安定性です。
1. 精製工程でAAV粒子が失われる
AAV精製では、回収、ろ過、クロマトグラフィー、洗浄、溶出、濃縮など複数の工程を経るため、それぞれの段階でAAVが一定量失われる可能性があります。
例えば、アフィニティークロマトグラフィーでは、AAVが樹脂に十分結合しない場合、フロースルー側にAAVが残ることがあります。また、洗浄工程や溶出工程でも、条件が適切でなければAAVの回収率が低下する可能性があります。
そのため、精製前後のvg/mLだけを比較するのではなく、各工程でのAAV回収量を確認することが重要です。
2. AAV血清型によって精製時の回収率が異なる
AAVの精製特性は、すべての血清型で同じではありません。
カプシドの表面特性や構造の違いによって、クロマトグラフィー樹脂との相互作用、膜への吸着、溶出条件に対する反応などが異なる場合があります。そのため、ある血清型では高い回収率が得られる条件でも、別の血清型では同じ条件を適用すると回収率が低下することがあります。
したがって、AAV2、AAV5、AAV8、AAV9などの血清型を扱う場合も、「AAVであれば同じ精製条件で処理できる」と考えるのではなく、使用する血清型に合わせて工程条件を評価する必要があります。
3. クロマトグラフィー条件がAAVに適していない
AAV精製でクロマトグラフィーを使用する場合、樹脂の種類だけでなく、結合、洗浄、溶出に使用するバッファー条件も回収率に大きく関係します。
pH、イオン強度、導電率などの条件が適切でない場合、AAVが樹脂に十分結合しなかったり、逆に結合が強くなりすぎて溶出時に回収しきれなかったりすることがあります。
また、AAVの血清型や製造条件によって最適な精製条件が異なるため、既存の条件をそのまま別のAAVに適用することが必ずしも適切とは限りません。
4. UF/DF工程でAAVが失われる
限外ろ過・透析ろ過(UF/DF)は、AAVの濃縮やバッファー交換でよく使用される工程です。しかし、この工程でもAAVの回収ロスが発生する可能性があります。
AAVが膜表面に吸着したり、膜の材質や処理条件によって回収率が変化したりすることがあります。また、濃縮倍率が高くなると、AAV粒子の凝集などによって回収効率が低下するケースもあります。
そのため、UF/DF前後のサンプルについてvg/mLだけでなく、体積も含めて比較することが重要です。
5. フィルター、チューブ、容器への吸着
AAV精製では、クロマトグラフィーやUF/DFだけでなく、フィルター、チューブ、バッグ、保存容器など、さまざまな接液部材を使用します。
AAV粒子の一部がこれらの表面に吸着すると、最終的な回収量が低下する可能性があります。特に、低濃度のAAVサンプルや小容量のサンプルでは、こうしたロスが相対的に大きくなることがあります。
精製工程に明らかな異常がないにもかかわらず回収率が低い場合は、使用しているフィルターや容器などの材質も確認する必要があります。
6. 精製条件によってAAVの安定性が変化する
AAV粒子は比較的安定なウイルスベクターですが、精製中のpH、イオン強度、温度、処理時間などの影響を受ける可能性があります。
条件が適切でない場合、AAV粒子の凝集や構造変化が起こり、回収率や機能的活性に影響することがあります。
特に、精製工程では単純に「AAVを回収できたか」だけではなく、回収したAAVがその後の実験で期待される機能を維持しているかどうかも確認することが重要です。
7. vg/mLが低下しても、AAVの総量が同じ割合で減少したとは限らない
AAV精製後の力価を評価する際に、特に注意したいのが vg/mLは濃度であるという点です。
例えば、精製前のサンプルが、
1 × 10¹² vg/mL × 10 mL = 1 × 10¹³ vg
だったとします。
精製後に、
5 × 10¹¹ vg/mL × 15 mL = 7.5 × 10¹² vg
となった場合、vg/mLは50%低下していますが、総vg量は50%減少したわけではありません。
このように、AAV精製の成否を判断する際には、濃度だけを見るのではなく、
総vg量=vg/mL × サンプル体積
として評価する必要があります。
精製前後のサンプル体積が大きく異なる場合、vg/mLだけを比較すると、実際のAAV回収量を誤って判断する可能性があります。
8. 空カプシドなどの不純物除去によって測定値が変化することがある
AAV製造では、目的のゲノムを含むfull capsidだけでなく、ゲノムを含まないempty capsidなども生成されます。
精製工程によってこれらの粒子やその他の不純物の割合が変化すると、精製前後で測定結果の構成が変わる場合があります。
特に、AAVの品質評価ではvg/mLだけではなく、カプシド量、empty/full比、ゲノム完全性、純度などを合わせて確認することが重要です。
つまり、精製後にvg/mLが低下したという結果だけから、「AAV精製に失敗した」と判断するのは適切ではありません。
9. AAV力価の測定方法による差
AAVの力価測定には、qPCRやddPCRなどの方法が使用されますが、測定条件や前処理によって得られる値が変動する場合があります。
例えば、精製前後でサンプルのマトリックスやバッファー組成が変わると、測定結果に影響する可能性があります。また、サンプルの希釈条件やDNAの前処理条件が異なる場合にも、測定値に差が生じることがあります。
そのため、精製前後を比較する場合は、可能な限り測定方法や前処理条件を統一し、単一の測定値だけで判断しないことが重要です。
AAV精製後の力価低下は、どのように確認する?
AAV精製後に力価が低下した場合、精製前と最終製品だけを比較するのではなく、工程ごとにサンプルを採取してAAVの回収状況を確認すると、原因を特定しやすくなります。
例えば、
Harvest → 清澄化 → クロマトグラフィー → Flow-through → Wash → Elution → UF/DF前 → 最終製品
というように工程ごとのvg/mLと体積を記録します。
特定の工程で総vg量が大きく低下していれば、その工程が主なロスの発生箇所である可能性があります。
さらに、必要に応じてカプシド量、empty/full比、純度、ゲノム完全性、エンドトキシン、残留宿主細胞DNA・タンパク質、機能的活性などを合わせて評価することで、単純な「力価低下」と製品品質の変化を区別できます。
AAV精製後の力価低下を判断するときのポイント
AAV精製後にvg/mLが低下した場合、数値だけを見て精製工程の良否を判断するのではなく、総vg量、工程ごとの回収率、サンプル体積、AAVの品質を合わせて評価することが重要です。
特に、血清型が変わった場合や精製方法を変更した場合には、同じ工程条件でも回収率が変化する可能性があります。
AAV精製では、「どれだけ高いvg/mLを得られたか」だけではなく、「どれだけのAAVを回収できたか」「回収したAAVが十分な品質と機能を維持しているか」を総合的に評価することが重要です。
AAV精製後の力価低下を正確に解析するには、精製前後の比較だけでなく、工程ごとの回収量と品質指標を追跡することが、原因究明への近道となります。
PackGeneについて
PackGene Biotech is a world-leading CRO and CDMO, excelling in AAV vectors, mRNA, plasmid DNA, and lentiviral vector solutions. Our comprehensive offerings span from vector design and construction to AAV, lentivirus, and mRNA services. With a sharp focus on early-stage drug discovery, preclinical development, and cell and gene therapy trials, we deliver cost-effective, dependable, and scalable production solutions. Leveraging our groundbreaking π-alpha 293 AAV high-yield platform, we amplify AAV production by up to 10-fold, yielding up to 1e+17vg per batch to meet diverse commercial and clinical project needs. Moreover, our tailored mRNA and LNP products and services cater to every stage of drug and vaccine development, from research to GMP production, providing a seamless, end-to-end solution.