組換えAAV(rAAV)のパッケージングでは、製造工程を完了したにもかかわらず、最終サンプルからAAVが検出されない、あるいはAAV力価が検出限界付近まで低下していることがあります。
このような場合、すぐに「AAVのパッケージングに失敗した」と判断するのは適切ではありません。AAVの製造には、ベクター設計、プラスミドの品質、産生細胞の状態、トランスフェクション、パッケージング、精製、検出など複数の工程が関係しています。いずれかの工程に問題が生じると、最終的なAAVの検出結果に影響する可能性があります。
そのため、AAVパッケージング後にウイルスが検出されない場合は、最終的な力価だけを見るのではなく、製造工程全体を確認しながら原因を切り分けることが重要です。
1.AAVベクターの設計を確認する
AAVパッケージング後にまったくウイルスが検出されない場合、まず確認したいのがAAVベクターそのものです。
AAVベクターの両端に配置されるITR(Inverted Terminal Repeat)は、AAVゲノムの重要な構成要素であり、ベクターゲノムの複製やパッケージングに関与します。ITRに欠失や再構成などの異常がある場合、プラスミドの濃度や一般的な純度指標に大きな問題がなくても、AAVの生産に影響する可能性があります。
そのため、AAVベクタープラスミドでは、DNA濃度だけでなくITRの完全性も確認することが重要です。
また、ベクターゲノムのサイズも重要なポイントです。従来型のrAAVでは、パッケージングできるゲノムサイズに制約があります。ITR間の配列が大きくなりすぎると、パッケージング効率の低下やゲノム完全性への影響につながる可能性があります。
特に、大きなプロモーター、GOI、調節配列、polyAなどを組み合わせる場合は、GOIだけではなく、ITR間に含まれるベクター全体のサイズを確認する必要があります。
他のAAVベクターは正常に生産できるにもかかわらず、特定のGOIを含むベクターだけが繰り返し生産できない場合は、ベクター構造、ITR、GOI配列などを重点的に確認するとよいでしょう。
2.プラスミドの品質もAAVパッケージングに影響する
AAVの一過性トランスフェクションによる生産では、複数のプラスミドを使用します。そのため、いずれかのプラスミドに問題があると、他の条件が正常でもAAVの生産量が低下する可能性があります。
代表的な問題としては、プラスミドの取り違え、DNAの分解、プラスミド構造の異常、ITRの再構成、純度の問題などが挙げられます。
特にITRを含むAAVトランスファープラスミドでは、構造の安定性を確認することが重要です。一般的な濃度や純度の測定結果が正常であっても、それだけでAAV生産に適した状態であるとは限りません。
同じベクターを使用して何度パッケージングしてもAAVが得られない一方、他のベクターでは正常に生産できる場合は、同じ条件で生産を繰り返す前に、プラスミドの同一性や構造を再確認することが有効です。
3.産生細胞の状態も確認する
AAVの生産では、使用する産生細胞の状態が最終的な収量に大きく影響することがあります。HEK293系の細胞を使用する場合、細胞の増殖状態、細胞生存率、コンフルエンシー、培養条件などがトランスフェクションやAAV生産に影響する可能性があります。
例えば、細胞の状態が通常と異なっていたり、細胞密度が適切でなかったりすると、トランスフェクション効率が低下し、その後のAAV生産にも影響することがあります。
また、同じ時期に複数の異なるAAVベクターで力価が低下している場合は、特定のベクターだけを疑うのではなく、使用している細胞や培養条件を含めて確認する必要があります。
4.トランスフェクションが十分に行われているか
プラスミドを用いたAAV生産では、トランスフェクションも重要な工程です。
AAVの生産に必要な各プラスミドが産生細胞へ適切に導入されなければ、その後の必要な遺伝子発現やベクターゲノムの複製、カプシド形成などに影響する可能性があります。
トランスフェクションに関しては、細胞の状態、DNAの品質、トランスフェクション試薬、DNAと試薬の組み合わせ、操作条件など、複数の要因を確認する必要があります。
AAVがまったく検出されない場合は、適切なトランスフェクション対照などを用いて、ベクターそのものに問題があるのか、それともトランスフェクション工程に問題があるのかを切り分けることが重要です。
5.AAVパッケージングシステムの構成を確認する
rAAVの生産には、ベクターゲノムだけでなく、AAVの複製やカプシド形成、必要なヘルパー機能を提供する各コンポーネントが必要です。
使用するプラットフォームによって、3プラスミドシステムや2プラスミドシステムなど、構成は異なる場合があります。しかし、いずれのシステムでもAAV生産に必要な機能が適切に供給されていることが重要です。
Rep/Cap、ヘルパー機能、AAVベクタープラスミドなどのいずれかに問題があった場合、AAVが正常に産生されない可能性があります。
そのため、AAVパッケージングで問題が発生した場合は、使用しているプラスミドの種類、血清型、各コンポーネントの組み合わせが適切であるかを確認する必要があります。
6.AAV血清型によって生産性が異なる場合がある
AAVの血清型は、組織指向性や体内分布だけでなく、生産特性にも影響する場合があります。
同じベクター構造と同様の製造条件を使用していても、カプシドの違いによってAAVの生産量や回収特性が異なることがあります。
例えば、ある血清型では正常なAAV力価が得られる一方、別の血清型では力価が大幅に低下する場合があります。
このようなケースでは、製造操作だけを原因と考えるのではなく、使用している血清型と生産系との組み合わせについても確認する必要があります。
7.精製や回収工程でAAVが失われていないか
AAVが産生されたにもかかわらず、最終製品でウイルスが検出されないケースでは、精製や回収工程も確認する必要があります。
例えば、回収効率が低い、精製工程でAAVが失われる、濃縮工程で回収率が低下するなどの問題があると、最終サンプルのAAV力価が大きく低下する可能性があります。
そのため、可能であれば最終製品だけではなく、製造工程の各段階でAAVを確認することが有効です。
例えば、
回収サンプル → 精製前サンプル → 精製中間体 → 最終AAV製品
のように段階ごとの結果を比較することで、AAVがどの工程から減少しているのかを把握しやすくなります。
回収段階ではAAVが検出されているにもかかわらず、精製後に検出されなくなった場合は、ベクター設計やトランスフェクションだけではなく、精製・回収工程を重点的に確認する必要があります。
8.「AAVが検出されない」ことが「AAVが存在しない」とは限らない
AAVパッケージングのトラブルを調べる際には、検出方法についても確認する必要があります。
例えば、qPCRやddPCRでAAVゲノムを測定する場合、プライマーやプローブの設計、検出対象領域、DNA抽出効率、サンプル希釈、PCR反応系などが測定結果に影響する可能性があります。
そのため、検出結果が陰性だった場合でも、すぐに「AAVがまったく産生されなかった」と判断するのではなく、陽性対照や標準品を含めて検出系が正常に機能しているかを確認することが重要です。
特にベクター構造を変更した後に突然AAVが検出されなくなった場合は、検出対象領域と新しいベクター構造との適合性についても確認する必要があります。
必要に応じて、AAVゲノム力価だけでなく、カプシド関連の測定や機能評価など、目的に応じた複数の評価方法を組み合わせることで、より正確に状況を判断できます。
9.AAVパッケージングでウイルスが検出されない場合の考え方
AAVパッケージング後にウイルスが検出されない場合は、まず「どの段階から異常が発生したのか」を確認することが重要です。
特定のベクターだけが生産できない場合は、ITRの完全性、ベクターゲノムサイズ、GOI配列、プラスミド構造などを優先して確認します。
一方、複数の異なるベクターで同時にAAV力価が低下している場合は、産生細胞、トランスフェクション、パッケージングシステム、製造条件など、共通する工程を確認する必要があります。
また、回収段階ではAAVが検出されるものの、最終製品で検出されない場合は、精製や濃縮、回収工程に問題がないかを確認します。
さらに、特定の検出方法だけでAAVが検出されない場合は、検出系そのものを確認する必要があります。
まとめ
AAVパッケージング後にウイルスが検出されない原因は、1つとは限りません。ITRを含むベクター設計、プラスミド品質、産生細胞の状態、トランスフェクション、パッケージングシステム、AAV血清型、精製・回収工程、そして検出方法など、さまざまな要因が関係する可能性があります。
そのため、AAVパッケージングに失敗したと考える前に、製造工程を順番に確認し、問題が最初に発生した段階を特定することが重要です。
AAVの生産トラブルを効率よく解決するためには、ベクター設計からプラスミドQC、細胞状態、製造工程、精製、最終検出までを一連の流れとして確認することが、原因の切り分けにつながります
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PackGeneについて
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