AAVの組織特異的な発現は、血清型だけで決まるものではありません。
血清型は主に「どこへ到達できるか」に関係し、
プロモーターは「どの細胞で発現するか」を左右します。
肝臓、肺、筋肉などを標的とするAAV研究では、プロモーターの選択によって目的遺伝子の発現範囲や発現強度が変わる可能性があります。
この記事ではプロモーターの詳細な作用機序には踏み込まず、研究でよく使用されるものを整理します。
AAVの肝臓・肺・筋肉研究で使用される代表的な組織・細胞特異的プロモーターをまとめました。
肝臓でよく使用されるAAVプロモーター
肝臓を標的とするAAV研究では、TBG、hAAT、HCR/hAAT、LP1、HLPなどが代表的なプロモーターとして使用されています。
ただし、同じプロモーター名であっても、研究によって使用される配列の長さやエンハンサーの組み合わせが異なる場合があります。そのため、実際にAAVベクターを設計する際には、プロモーター名だけでなく、使用する具体的な配列と参考文献を確認することが重要です。
肺・気道でよく使用されるAAVプロモーター
肺を標的とするAAV研究では、単に「肺特異的プロモーター」を選択するのではなく、どの肺細胞を標的とするのかを先に決めることが重要です。
例えば、
- SFTPC / SP-C:肺胞II型(AT2)細胞関連研究
- SCGB1A1 / CC10:Club細胞・気道上皮研究
- FOXJ1:線毛上皮細胞研究
- KRT5:気道基底細胞関連研究
など、標的細胞に応じて候補となるプロモーターが異なります
筋肉でよく使用されるAAVプロモーター
筋肉を標的とするAAV研究では、MCK/CKM系プロモーターが広く使用されており、CK6、CK8、tMCKなど複数の構成が研究されています。
また、MHCK7はMCK関連調節配列とα-MHC関連配列を組み合わせたキメラ型プロモーターで、骨格筋と心筋の両方を対象とする研究で使用されています。
ただし、AAVの組織特異的発現はプロモーターだけで決まるわけではありません。
実際のベクター設計では、
標的組織 → 標的細胞 → プロモーター → AAV血清型 → 投与経路 → 発現量
という流れで総合的に検討する必要があります。
さらに、AAVには搭載可能なゲノムサイズに制約があるため、プロモーターの長さもベクター全体の設計に含めて考える必要があります。
まとめ
AAVの組織特異的発現を検討する場合、「どのプロモーターを使うか」だけではなく、どの細胞で、どの程度の発現を得たいのかを明確にすることが重要です。
肝臓ではTBG、hAAT、HCR/hAAT、LP1、HLP、肺ではSFTPC、SCGB1A1、FOXJ1、筋肉ではMCK、CK6、CK8、tMCK、MHCK7、Desminなどが代表的な候補となります。
実際のAAVベクター設計では、標的細胞、動物種、投与経路、プロモーター配列、GOIのサイズなどを合わせて検討することをおすすめします。
免責事項:本記事は公開文献および公開資料をもとに、AAVで使用される組織・細胞特異的プロモーターを整理したものです。プロモーターの配列、長さ、エンハンサー構成、動物種、実験条件によって発現特性は異なる場合があります。具体的なベクター設計に使用する際は、対象となる原著論文や使用配列を確認してください。
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